●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんのシリーズ、ニューヨーカーの友人!からの4(終わり)。



聞き書き ニューヨーカーの見たニッポン

二つの祖国

マンハッタンはハドソン川とイースト・リバーにはさまれ、面積は約JR山手線の内側に相当

する細長い島だ。いわばニューヨークの心臓部であり、その狭い土地に重要な企業や施設が

集中している。

その結果、建物は上へ上へと伸びるしかなく、すごい密度となってあの超高層ビル群となっ

ている。

さてその家賃たるや推して知るべし。彼女はニューヨークの家賃の高さを嘆く。

例えば、マンハッタンのミッドタウンあたりのアパートは1DKでも30万円近くする。彼

女は同じアパートに20年以上住み続けている。

ランドリーが地下にあって、時には井戸端会議となるが、長年住み続ける住民は少なく、彼

女は主のような存在だ。

「これだけ活気があって、エキサイティングな街がほかにある? ビジネスチャンスはいく

らでもあるわ」

確かに。世界有数のビジネス街で文化の発信地。各国の人々が集まる国際都市、何かをしよ

うとしたらこんな魅力的なところはないだろう。

彼女も日本企業にもアメリカ企業にも勤めたりしながらスキルアップして、自分自身で起業

したりした。

そして今、彼女は年老いた。

晩年をどこで過ごそうか、大きな課題なのである。今回日本で終の棲家を探していくつか見

学したが、彼女はすでに日本の生活の適応能力が失っていることを感じたと言う。考え方、

越し方など彼女は異質になっていた。

そして、老後をどこで暮らそうか決めあぐんでいる。

長年住み慣れたニューヨ−クか生まれ故郷の日本でか…

人生の終わり方の悩みは深い。



戻る