●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、今回はラクチン夏休み。



シリーズ 生き物をダシにして

ネコになる

長い夏休みをとりました。

ココ通のエッセイも休みました。

実は私、猫になっていたのです。

猫になった理由は単純。勝手気ままだから。

猫は犬ほど人間におもねず、虎ほど偉そうではありません。一番惹かれるのはあの幸せ

そうな顔。不満にゆがんだ横顔など見たこともありません。しなやかな体といい、ノー

ブルな顔といい、穏やかな振る舞いといい、いるだけでも存在感がアピールできるでは

ありませんか。

ところがネコになってみて気がつきました。仲間の野良猫がめっきり少なくなったこと。

そのかわり、小型の飼い犬がすごい勢いで増殖中なのです。

夕方のお散歩タイムを見てご覧なさい。リボンなどをつけた甘ったるい小型犬がちょこ

ちょこと嬉しそうに歩いていること!中には歩かないで飼い主の腕の中でぬくぬくと抱

かれているものまで。

古き良き野良猫界はもうありませんでした。昼寝に最適な場所もエサをくれるおばさん

も快適な野外トイレもぐんと少なくなっていたのです。

犬は猫より利口で常に人間に気を遣い、さまざまな場面で役割を担っていることは認め

ますが、人間の都合で良い悪いを決めないでいろんな生き物と共存共栄でいいではあり

ませんか。

私、個人的には役立つ人格犬よりも自分のことしか関心のない利己主義猫のほうをエコ

ヒイキしているのです。

利己主義者は常に孤独なものです。どこか生きにくさを抱えながらも人生こんなものよ

と覚悟しているのが哀れを誘います。やさしくしてあげなければなりません。見た目も

可愛らしいのならなおさらのこと・・・

独断と偏見に満ちたわがままな私の夏休みでした。



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