思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
夏休み中のシャンせんせい、ココ通に立ち寄って小ばなししてってくれました。



8月16日

落語のまくらに“落ち”のいろいろを使う人がいる。

駄洒落をつかった地口落ち、よく考えないとどうして落ちになるのかわからない考え落ち、など

など。


「お前はバカだな。お祖師さまの縁日を“いつかむいか(五日六日)”だなんて教えやがって、

ここのかとうか(九日十日)じゃねぇか。すぐ行って教えなおしてこい」

「えっまいったな。教えなおして来いったってどこのだれだか名前がわからねぇ」。

「おーい、そこの人。あらいけぇねぇ皆振り返っちまった。どうしよう。あっ、そうだ。そこの

“いつかむいか”」

そうするとさきほどの人が振り返って。

「なのかようか」(七日八日『なにかようか』)

「あーぁ、たすかった。ここのかとうか(九日十日)」

話しを端折って文字にしてしまうと面白くもなんともないが、名人がやると五、六,七,八、九、

十と言葉のテンポが小気味よくなかなかに笑える。

これを、最後の言葉が落ちになる途端落ち、または言葉がトントンとつながるのでとんとん落ち

ともいう。


先日、炎天下の万世橋交差点で信号待ちをしていたとき。

「万世橋警察はどこでしょう」と、初老の男が聞いてきた。

「万世橋署はここですよ」と振り返るとそこには空き地が広がっている。そうだ万世橋署は何年

も前に引っ越してしまった。最近秋葉原詣でをしなくなったので、すっかり忘れていた。

「すいません、ここにあったんですが…。確かこの近くに移ったはずです。あの辺の店で聞いて

ください」と周りを見ながら答えると男は礼を言って立ち去った。

男の姿を見送りながら、ふと振り返ると道路向こうに万世橋警察署の看板が見えた。

それは、AKBにしては地味な看板なので見落とした。

男は、まだ声の届くところにいた。

さっそく教えてやろうと思った瞬間、変なもので“とんとん落ち”のことを思い出した。

ここで「おーい」と声をかけたら皆が振り返るだろう。そうだ「あのー、警察を聞いた人」と声

をかけようと決めて「あのー」と声をだしたら、その男だけが振り返った。


8月も半ばをすぎると夏休みももう少し。手付かずの宿題が気になるころだ。

小学校の夏休みには、登校日というものがあった。これは夏休みボケで学校を忘れないように、

との親心だったのだろうか。

人とのふれあいも、間があくといけない。

ココ通然り。忘れないうちに登校日にした。


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