11/30のねこさん       文は田島薫

青いおうち

わが家のそばの小さな坂を上がり少し行ってまた別の小さな坂を下る3〜4分ほどのとこ

ろにスーパーがあって、そこでも食料や日用雑貨をよく買に行くんだけど、先週のちょ

っと寒い日にそこへ出かけた時のこと、坂と坂の間の高台にある、並んだ小さな借家の

1軒にちょうど、グレーとしろの柄のきれいな毛並みのねこさんが入って行くところを

見かけた。

その借家はとたん張りであまりお金をかけてないようなんだけど、ちゃんと引き戸の玄

関や垣根と小さな庭もついた心配りのある作りで、そこそこ手入れのされた植木が並ん

でる。ねこさん3段ほどの石段を上ってちょっとこっちをふり返ってから、どんどん歩

いて行き、庭の奥にあったブルーシートで作られた小さな小屋に入り、こっち向いてく

つろいだ顔してる。

ぼくはこのあたりじゃ、とても恵まれた生活してるんだよね。だんだん寒くなって来て

もぼくには、ここの優しいおじさんが作ってぼくにくれた、ちゃんと屋根と囲いのある

家があるんだ。まあ、ぼくだって人に好かれるようにいつも毛づくろいしたりして、身

だしなみを整える努力もしたから得られたことではあるんだけどね、ぼくってエライッ。

そこでこっちを見てる人もぼくに感心してるようだね〜。ほら、こうやって、ぼくんち

へのアプローチのこの階段を上がってから、美しい庭をながめながら歩くっつーわけな

んだね〜。で、もって、ここ、ここ、ここ入ると、ほ〜らあったかいんだね〜。青い壁

や天井も美し〜。なかなか自分の家みつからないで放浪してる仲間もいるっつーのに、

ぼくってしあわせもんなんだね〜、いや〜まいったまいった。


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