●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
新聞記事から表情を追加の新シリーズ、愛ってなんだろう。



独白シリーズ

深層心理

結婚して10年。私は妻子ある男性と恋に落ちた。

私の家庭も彼の家庭も冷え切っていた。

「夫と離婚したら結婚してくれる?」

私は彼に聞く。彼の返事は今ひとつはっきりしない。

逃げの姿勢に私は彼の愛情を疑った。

が、ときには

「家庭を壊さずに一生君を愛しぬく」

なんて熱っぽく愛を語る彼。

彼の矛盾する言葉や態度に私はどんな気持ちでいたらいいのだろか。

彼が思うとおりに動かないのでいらいらする。そのとき、私が彼にとってその程度の女

だと気がついていたら悲劇は起こらなかったものを・・・

彼との距離感がうまくとれなかった私は、全面的に相手に没入するか、全面的に拒否す

るか、つまり愛か憎しみかといった具合に切羽詰まった気持ちになっていった。

私は彼を追い詰める。

「あなたはどっちつかずの態度ばかり。なぜはっきりさせないの。あの鈍くさい奥さん

とまだ一緒に暮らす気なの?」

途端に彼の顔色が変わった。と同時に、彼の手が私の首をぐいぐい絞めてきた…

私は次第に消えていく意識の中で、なぜ? を繰り返す。


事件の載った新聞によると「妻の悪口を言われたのでカッとなって首を絞めた」と自首

した彼が動機を語っているという。もちろん死んでしまった私は知るよしもないが…


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