●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
新聞記事から表情を追加のシリーズ、若者の居場所は。



新聞ネタ独白シリーズ

モスキート音

あの公園に設置したモスキート音にはまったくムカつく。

若者だけに聞こえる不快な音だって? 邪魔だから、迷惑だから、不快な音で追っ払おう

という発想そのものがなんと身勝手。おいら達虫けらじゃねえんだぞ。

そんな差別を考えた大人の気が知れねえや。ますます人間が信じられなくなった。


大人たちは何もわかっちゃいない。おいら達ははみ出し者でいつだって居場所がないんだ。

家に帰ったって温かい家庭なんかありゃしない。父親はあくせく働くばかりで殆ど家にい

ないし、母親は自分の亭主の不満をおいらに八つ当たりで小言ばかり。ろくに料理もしな

いで酒くらってるしさ。

学校行っても授業がわかんないから落ちこぼれで馬鹿にされて、おまけにいじめの的にな

ってまったく浮いちゃってんだ。

ここにたむろする仲間のひとりは母親の再婚相手から虐待を受けていてボロボロさ。もう

ひとりなんかは親のエゴで有名校へ入れと勉強、勉強と尻たたかれて能力以上のことを強

いられてヤケおこしてるしさ。

そうした連中にはこの公園が唯一の息抜きで友達づくりの場所なんだ。

そりゃあ、夜中に騒ぎ、近所に迷惑をかけてる非行集団かもしれないけどさ、こうしたお

いら達の根本の問題を解決してくれないで、モスキート音でただ追っ払うだけだったらお

いら達は別の場所へ移動するだけさ。

もっと大人たちは日頃からおいら達に関心を持ってちゃんと評価して認めてくれよ。昼の

世界に居場所があればこんな公園にいやしないさ。


戻る