6/29のねこさん 文は田島薫
うっしー放浪する
土曜の昼ごろ、うっしーだ、って(同居人、の表現がどうも不評なようなんで、ここでい
きなり呼称変更して)家人、の声がするので2階の窓から下見ると、奥の家に行くアプロ
ーチのまんなかにうっしーがいて、ゆっくり歩いたり、ちょっとその場に寝そべるような
しぐさをしているのが見える。
や〜、こないだあのアパートの通路を自分ちにしようかと思ってくつろいでたところ、あ
の人にあいさつされて思わず慌てて逃げちゃったもんで、あの場所にいるのなんだかかっ
くわりー気がしちゃってさ、一応、あそこはたまたまちょっとだけ休んでただけなんだ、
って見てもらうことにして、あん時はジョギングの途中だったから、って、で、すぐ走っ
たんだ、ってことで、あそこじゃない別のとこに自分ちを探してる、ってわけなんだけど
さ、ここの細い長いコンクリのとこいい感じだね〜、ちょっと住めるかどーか寝転がって
みようか、ん〜ん、いいんだけど、屋根がないか〜、って顔してる。
じっとながめてると、また立ち上がって奥の家の方へ歩き出し、門の中に入って行き、す
ぐ左手にあるスチールの物置きのにおいをかいで、う〜んちょうど屋根があってよさそう
なもんがあるぞ、で、問題は入口が閉ってて、(とんとん)ぼくの肉球のついた手では開
かない、ってことで引き返し、小さな庭に沿ってある建物のすぐ向こうの玄関のところま
で歩いてからちょっと立ち止まり、う〜んこのあたりはちょっと屋根が出てるんだけど、
横殴りの雨ん時は困るからな〜、ってまた戻って来て、門の中からこっちに顔向けた時、
ベランダにいる私と目があった。
うっしー、ちょちょちょ、って舌で合図すると、ちょっと目を見張ってから、右手のフェ
ンスに沿ってとととと、と小走りに逃げて行き視界から消えた。
あ、ご近所になるあの人だ、いけねー、またあいさつされちゃった。まだ自分ちが決まっ
てないのに、って思う間もなく走ってる自分に気づいて、ぼくのばかばか。