思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいの「ぼけのたわごと」、タイトル変えました。
天から何のメッセージなのか?天才のシャンさん泣いております。
割れて砕けて
おほうみの いそもとどろによするなみ われてくだけて さけてちるかも(源 実朝)
新年早々割れるだの欠けるだのと人の好まない言葉が続いた。
自分は特別縁起をかつぐわけではないが、まったく気にならないかというとそうでもない。
なにか悪い事がおこるのではないかという気がしたこともたしかである。また、二度ある
ことは三度ある、と割れたり欠けたりする話が続けば読者を喜ばせるのではないか。そん
なことも考えていた。
やはり神様はいた。二度あることは三度あった。
毎朝起きぬけに10年以上愛用したマグカップでコーヒーを飲む。
その日もコーヒーを点てたときカップを置いたところが悪かった。口径の半分もない小さ
な底の安定性の悪いカップは、さわりもしないのに転がり落ちて、割れて砕けた。
それは、ウイーンフィルハーモニー創立150周年記念のときに発売されたウイーンフィ
ルの紋章の入った得がたいカップなのだ。
その紋章を見るたびに思っていた、いつの日かムジークフェラインザールでウイーンフィ
ルを聞くという夢も、カップとともにはかなく砕け散った。
なお悪いことに破片の一つは、複雑な指揮棒の動きに悩まされたウイーンフィルの楽員が
「ベートーベン≪運命≫の出だしを振る巨匠フルトヴェングラー」と名づけたハンス・ウ
ールマンの抽象彫刻によく似ている。
いい形で残った破片だが、日頃理性をもって任じている不肖シャンも、怨霊の世界に引き
込まれるようで飾っておくのは止めにした。