●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさんは、他人の元気なやりとり楽しんでます。
立ち聞き
近所の新聞店では、年間購読料を初めに一括払いをすると、地元の商店街の金券を
2000円分くれる。
その残りがまだあったのを思い出し、本屋で来年の手帳を買うことにした。
店の客は立ち読みしている若い男一人だけ。北向きの鬼瓦のような顔をした店番の
オバちゃんと本を並べている業者らしき若い(?)女性がおしゃべりしていた。レ
ジと本棚の距離のぶんだけ二人の声はでかい。
「今日は寒いねえ」
「この間スカートを穿いたらスースーしちゃった」
「結婚式でもあったのかい?」
「ううん、葬式」
「そんなことだろうと思った。あんたがスカートを穿くのは冠婚葬祭のときくらい
だろね」
「そのぶん、今は男が穿くんだよ。原宿あたりでみかけるもんね」
「スカート男子かい」
「化粧もするし、オネエ言葉も話す」
「ははは、それじゃあ、性同一障害だよ」
「いまじゃ男は可愛く、女は勇ましくだよ。そういえばオバちゃんの辞書には可愛
いいという字はないんだよね」
「余計なお世話っ!」
ポンポンと小気味いい会話が続いて、思わず私は耳がダンになった。
立ち読みならぬ、立ち聞きのお得ないっときでした。