4/13のねこさん       文は田島薫

言葉のわかるねこさん

先週の金曜日
、外はいい天気、こんな日は自転車で散歩したいな、って思ったんだけど、

事務所で仕事中の身なんで、自分で何か口実を考えてたら、そうだ、税金の督促状が来

てたんだったラッキー、ってことで、それを銀行で払う、ってことで出かけた。

気持いい日射しの中を駅に向かうなだらかな坂を軽いギアで上がって行くと、ちょっと

うすよごれた黄色いねこさんが向こうの角をまがってこっちへ走って来た。顔を見ると

ちょっと鼻の下なんかもよごれてるんだけど、通り過ぎそうな時、こっちと目と目が合

ったもんで、急いでるね〜、って思わず私が声に出して言ったら、ちょっと先へ行き過

ぎてから立ち止まってふり返り、こっちをじっと見てる。

ねこさんに声かけると立ち止まる、ってことはよくあることなんで、ま、すぐに前に向

き直して行っちゃうんだろうな、って思い、気にせずにこっちもそのままゆっくりっと、

前進みながら後見てたんだけど、ねこさん、じっとこっち見ながら動かない、ゆっくり

遠ざかって、小さくなっても動かないままずっと私を見送くってた。

ねこさん、自分の用事で急いでて、向こうから人間の自転車来たけど、早くすれちがっ

ちゃえば問題ない、って思ってたら、すれちがい様、人間が、急いでるね、って話しか

けたもんで、どうしてぼくが人間の言葉わかるのを、この人は知ってるんだろう、って

びっくりしちゃって、あれ、ぼくはなんで急いでたんだっけ?って思ったり、なんであ

の人はぼくに話したのかな、友だちになりたかったのかな〜、そのわりにあっち行っち

ゃうし、おかしな人もいるもんだ、って首かしげて立ち止まってたのだ。


戻る