●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今週のもどきさん、赤飯に寄せる信頼を語ります。



赤飯ものがたり

久しぶりにお赤飯を炊いた。

何かいいことがあったのかって? いいえ、何もございません。

私はあのもっちり赤いご飯と豆が大好きなのである。うれしいにつけ悲しいにつけ炊く

のが私流。不思議とお赤飯を食べると元気もりもり湧いて、エンジンがかかりもうひと

頑張りするかと腕まくり状態に入れるのだ。


ものの本によると、古くから赤い色は邪気を払い、厄除けの力を持つと信じられていた

とか。そのため昔はお赤飯が神事の際のお供え物のほか、葬式などの厄払いにも食べら

れてきて、慶事に食されたのは江戸時代になってからと書いてある。

ほらね、うれしいときも悲しいときもお赤飯というのは大正解。


作り方は私の場合、もち米と小豆より少し大きいささげ豆を使い、圧力鍋で炊く。炊き

上がると部屋中に甘やかなご飯と豆の豊かな香りが漂い、これを幸せと呼ばないでなん

としよう。

今回の私の赤飯食儀式はというと、

最近、巷では桜だ花見だって浮かれているというのに、なんとなく私の体のすみずみに

力が入らない。なんか自然界に満ちている新しい芽吹きのエネルギーや急に強さを増し

た光のパワーに、私のすべてが吸い取られてしまったような虚脱感・・・

厳寒のときあんなに元気で春になったらあれもやろう、これもやろうと決めたのに、こ

こへきてすべてが億劫になるなんて・・・

春愁? プチうつ? 笑わせないで! 柄じゃない! 

やっぱ、ここはひとつお赤飯パワーの出番でしょう。

というわけ。


ちなみに、赤飯に添えられる南天の葉は、腐敗を防ぐ薬効があるのと「難を転ずる」と

の意味が込められているのだそうな。

ナットクの一品。


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