●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの新シリーズ4回め。ルックスとキャラの妙味について
シリーズ リポーター奮闘記
マメさが一番
人と話していて意外な面を発見すると私はワクワクすることがある。
応接室に入ると私に仕事を依頼したその人は柔らかそうな革張りのソファに体を沈ませて
いた。顔を合わせるなり私はえっ、と驚いた。パンチパーマの頭、鼻の下にチョビヒゲ、
太い縦じまのダブルのスーツ、よく光る目。
とくれば、いかにもといった感じではないか。ヤバイ、一瞬思ったが、あにはからんや、
その人はゆっくり立ち上がると外見とは裏腹にかん高い声音で「やー、いらっしゃい」と
愛想がいい。そして「まあ、まあ、どうぞ」と私に座るようにすすめ、「キミィ、コーヒ
ーを頼むよ」と傍らの女子社員に言い、振舞いがなかなかマメなのだ。ニコニコしたとこ
ろなんか手品のマギー司郎みたい。
実はこの人は今では駅近くの1等地に13の痩身教室を展開する、飛ぶ鳥落とす勢いの社
長なのである。私はその会報誌をつくるべく呼ばれたのであった。
一通りの打ち合わせが済むと雑談になった。またまた意外、ちょっとオネエ言葉を使う。
「ボクはねぇ、昔、美容師だったのよ。苦労して自分の店を持って、それから女性のため
の痩身教室を開いてこれまでになったというわけ。女性は美しくしていなければならない、
というのがボクの信条でね、ボクの使命はそのお手伝いをすること。わかるでしょ?」
うーん、わかるでしょ、といわれても…もしかして単なる女好きかもしれないし……
私は美容師=パンチパーマ、痩身=縦じまスーツといった図式が浮かんで勝手に納得する。
そうすると案外わかりやすく一見強面風から、やさしくて愛嬌があって憎めないキャラな
のかもしれないと思った。
きっとこの社長のマメさがこうした独自のオシャレとなり、また事業の成功を導いたのだ。
それから徐々にその経営振りが明らかになるのだが、結局、このマギー司郎社長とは会社
が倒産するまでの6年間の付き合いとなったのだった。