●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
シリーズ8回め。だれもがわかってるつもりでわかってないことについて


シリーズ リポーター奮闘記

言ってほしい言葉


もし、プロポーズの言葉が

「結婚してください。きっとあなたを幸せにします。」

なら、私はちょっと考えてしまうだろう。

「結婚しよう。そして二人で幸せになろう」

なら、とっさにうなずいているかもしれない。

人には言いたい言葉と言ってほしい言葉がある。

前者は格好よく是非言ってみたい言葉である。だけど本人が陶酔しているだけで、どこ

か嘘っぽい。

後者は気負わず二人が同じ立場に立っているのでお互いに負担がない。

個人差はあるかもしれないが、相手がどんな言葉の受け取り方をするか大切に考えない

と心に届かないからから気をつけよう。


日常でも人と話していて、あ、この人はきっとこんなことを言ってほしいんだな、とわ

かるときがある。

例えば、疲れているときに、ごくろうさま。落ち込んでいるときには、頑張れ。不安な

ときは大丈夫。寂しいときには愛している。など。

生きていくうえで、きちんと言いたい言葉を言っていくのはもちろん大切なことだが、

相手の気持ちを考えて言葉を選ぶのもとても大事なことではないだろうか。


私は仕事でたくさんの広告文を書いてきた。商品の宣伝にしても会社の宣伝にしても、

いくら長所やメリットを声高に謳いあげても読者にまったく反響がないことがある。そ

れは読み手が何を求めているかを理解していないからであった。

相手が言ってほしい言葉をすくいとったとき、一方通行ではない心に響くメッセージが

送られる。

コミュニケーションとはそういうものだと思う。


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