11/25のねこさん       文は田島薫

こころのきず

ねこさん、うまちゃんか、それとそっくりの彼のけんか相手かがのっそり家のわきや

前の道路を歩いて行くのを見ただけなんで、コラムのネタが困った。

で、何か書くことないかな、って考えて、これはあまり楽しい話じゃないし(え?い

つもだって楽しい話読んだ覚えないって?)、どっちかっていえば重い話なんで、こ

のコラムの最初の主旨と変わってきちゃうきらいもあり(え?もうとっくに変わっち

ゃってるだろって?)、ずっと忘れられない話なのに封印してたもんを、しょうがな

いんで開けちゃおう。


もう20年ぐらい(そこまでは前じゃないかな?)昔のことなんだけど、仕事の帰り、

駅から自宅への下り坂道の途中、JRの高架のわきのちょっと土手になって草が生え、

手前に低い金網のフェンスがあって、うまく小さな囲いのようになったところに、生

まれたばかりでまだ目の開かない小さな灰色のねこが泣いていた。

思わず手にとって家に持って来ちゃったんだけど、ねこを嫌うものが近くにいたりす

ることもあり、どうしようか悩みながら、その日、ベッド作ったりミルクやったりト

イレをさせたりしてると、ねこはもう私に信頼寄せて触れるとぐいぐいと身体を寄せ

て来る。


ねこ好きの近所の家に相談したり、何人かの友人に、いらないか電話したんだけど、

だめで、わが家のとなりのバレエ教室に子供たちが集まるんで、手書きのふざけたチ

ラシを作ってそこの主人に教室に張り出してくれ、って頼んだんだけど、翌日、窓開

けた向こうから私の方見た子供たちから笑ってもらえただけだった。

こりゃいかん、って次の日の晩、ねこを長年飼ってる友人にもう一匹どうだ、って電

話したら、飼えないなら早めに元の場所へ戻した方がいい、ってアドバイスされ、そ

りゃそうだろうな〜、って一睡もせず悩んだ末、出勤には2時間以上早い早朝にねこ

抱いて元の場所へ戻して事務所に行った。

事務所にいてもねこのことが気になって、だれかに拾われてればいい、って都合よく

考え、もし帰りにまだねこがいたら覚悟決めて飼うことにしよう、って、考えながら

味のしない酒を飲んでからとっぷり暮れた頃、現地を通ると、ねこはいなかったんだ

けど、よく考えると、拾われた、って保証はない。保健所に通報されたり、カラスに

連れ去られたかも知れないんだから、今も罪の意識を抱えたままだ。


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