●連載
がたやま娘のひとりごと 文はこんのたえこ
地方文化都市山形で、世界の様々なことを感じ考えている
賢くうら若い(?)娘の話を聞こう、疲れたおじさんおばさんたちよ!
たえちゃん、懐かしいものとのお別れを哀しんでます。
歴史ある建物
山形市内は、由緒正しき古い建物が残る町でもあります。
「文翔館」をはじめ、古い映画館があったり、お蔵のある卸問屋さんがあったり、お蔵を移
築してモダンに改装した喫茶店があったり、っていうのがある。
うちの町内もけっこう古く、曲がり角にある大きい荒物屋さんが我が町のシンボルのように
勝手に思っていた。
ところがある日、「閉店セール」っていうのをやっていて、お店のモノ一切合切を処分して
いた。何だろうって思ったら、商売をやめてマンションを建てることになったんだとか。
日にちが経つにつれて、お店のモノはどんどんなくなっていき、まとめて捨ててあるモノも
目につくようになった。母がぞうりが捨ててあるのを見つけたので、そこのお店の仲良しの
おじさんに「捨てるくらいならちょうだいよ。」って言ったら、「お前、このぞうり、葬式
の時に履かせるぞうりだよ。そんなの持って行ってどうすんのや。」と言われて、お互いに
バカ笑いしていたらしい。そうだよな、葬式の時のぞうりなんて、閉店セールでも売れない
よな(笑)
その荒物屋さんはとても古くて大きくて、未だに木の扉で、毎朝おじさんが店を開けるのに
木の扉をはめたり外したりしていた。昔のお店らしく、土間と畳のあがりがある。冬には上
からかんじきが吊してあったり、昔は火鉢を置いていたように記憶しているなぁ。いつもお
線香の香りがしていた。私は子供の頃に、プラスティックのミニスキーを買ったり、虫かご
を買ったり、お使いでロウソクやお線香を買ったりしていたくらいで、大人になってからは
ほとんど行っていないけど。
工事が始まって、あれよあれよという間に、まっさらな土地になった。解体業者は、建物を
ただ壊すのではなく、きちんと解体してくれるような業者さんだったみたい。
いつかどこかで、この古い荒物屋さんの建物が使われていたら良いと思う。そうしたら、あ
の懐かしいお線香のような良い香りもしたらいいな。