5/26のねこさん 文は田島薫
路ばたの王さまねこ
先週は駐車場の王さまねこのこと書いたんだけど、今週は王さまねこシリーズ、続編。
王さまねこが王さまでいられるのは、人間との間合いに安心してる時だ、って仮説を
立てたわけなんだけど、土曜に自転車で食料の買い出しに出かけた露地に、それをく
つがえそう、って王さまがいた。
買い出しルートは、前回の図書館ルートとは反対の場所でかなり離れているんで、別
人(ひとじゃないっ)だと思うんだけど、そっくりなちゃいろのねこさん、道路のわ
きで、ゆったりと寝そべってこっち眺めてるのが、はるか前方に見える。
あんなに、堂々としてるけど、そば行くと逃げちゃうんだろうな、って思いながら、
自転車の速度を徐々にゆっくりとさせながら近づいて行く。
5メートル、3メートル、そろそろ立ち上がるはずだ、って、あれ、1メートル、止まっ
たけど、こっち見上げて、なんだね、きみは?って、堂々と落ち着いた顔が言った。
あ、路ばたの王さまでしたか、って、軽く会釈などして、行き過ぎた。
すぐにつかまえられちゃうぐらいの距離まで行っても動じない、ってのは、よっぽど
自分の力に自信がある、ってことかも知れないけど、だいたい王さまってものは、自
分ひとりで戦ったりするんじゃなくて、家来を使うもんだから、ひとりぼっちで堂々
としてるってのは、ただの世間知らずか、ただ単に人になれてただけで、ひょっとす
ると、頭なでたら、ごろん、って寝転がったりして、なんだい、王さま、ってただの
愛きょうもんじゃないか、ってことかも知れない。