●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさん、実地版「さおだけ屋はなぜつぶれないか」


さおだけ屋

梅雨は明けていないのに、太陽が照りつけ気温がぐんぐん上がった先週の昼下がり。

家の前の通りを女性の声で“さおだけやー”の売り声。それが終わるや否や今度は男性の

声で“ご不要になった大型ごみはありませんか〜回収いたします”のアナウンス。おや、

と思って窓から覗くと1台の車がゆっくり通っていく。荷台には竿竹とテレビが1台。そ

れを見て私は「ははーん、このガソリン高で、どうせ同じ地域を回るのだから、さおだけ

屋と大型ごみ回収の一挙両得をねらったな」と合点した。それにしても女の声と男の声を

使い分けたところが微妙というか、芸が細かい。

ちょうど、田島氏にココア通信の原稿を送るメールをしていたので、実況放送風にそのこ

とを書いたら、田島氏のコメントは、「なるほど合理的ですね。でも二兎を追うもの…の

伝でいくと、どちらも繁盛しそうもないですな」というものであった。

それもそうだなあ〜

以前私は両方とも利用したことがあった。

さおだけ屋は“2本で千円、20年前のお値段です”の触れ込みに思わず声をかけた。見

せてもらった2本で千円のさおだけは細くてヘナヘナで使い物にならない代物。だまされ

たと思ったが、呼び止めた手前、仕方なく丈夫そうな1本を選ぶと2800円也だった。

ああ、やっぱりさおだけ屋はつぶれないわけだ。

大型ごみ屋はやはり“気軽にお声をかけてください”の声につられて古い扇風機とプリン

ターを処分しようと呼び止めた。すると1個2000円という。あまりにも高いので、ち

ょっと強面のお兄さんだったけど思い切って「高いので止めます」というと、たちまち1

個1000円に値下げするではないか。まったくいい加減だ。

どちらもあこぎなのでこりごり。2度と利用するまいと心に誓っているのだけれど、それ

にしても昔は律儀な豆腐屋からラーメン屋・焼き芋屋まで流しの便利屋さんがたくさんあ

ったけどなあ。


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