●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんが先日行った旅行の旅行記連載4回めです。



シリーズ 大連みやげ話

中国のトイレ事情


旅の印象はささいなことで決まることがある。土地の人との会話とか、食べ物とか、天気

とか…

私は中国ってあまり好きな国ではないのだけれど、どういうわけか4回行く羽目になって

いる。その都度強烈な印象を残すのはトイレ。うら若き(とはいえないが…)女性がトイ

レ、トイレと騒ぐのははしたないけれど書かずにはいられない。

第1回目の旅行は15年ほどくらい前だろうか、中国はまだまだ発展途上国でトイレでは

強烈なカルチャーショックを受けた。

魯迅公園でのこと。掘っ立て小屋のようなトイレの入り口におばあさんが怖い顔して座っ

ており、5本の指をパッと広げる。5角のお金だとようやく気づいて支払うと固い茶色の

紙を2枚渡された。中に入ると視界がいやに広々としている。それもそのはず、ドアや仕

切りが下半分1メートルくらいしかなくすべて見通せてしまうのだ。真ん中の一本の溝に

水が流れていてそこをまたぐだけ。座れば隠れるが、待ってる人が上から覗き込めば丸見

えで、おまけに内と外でおしゃべりまでしている。私はトイレ外交なんてごめんだ。意を

決して傘をさして済ませたのだった。

時は移って今回の旅。その頃から比べてだいぶ良くなっていて、さすがにドアが半分とい

うのはなかったが、とんだ災難にあってしまった。

大連の中心地中山広場に面して、昔政治家、軍人など要職にある人が泊まったという由緒

正しき「大連賓館」という古いホテルがある。見学したついでにトイレに寄った。空いて

いるトイレに入ると鍵がこわれているではないか。ま、いいか、とギュッと閉めて用を済

ませて開けようとしたら今度は開かないのだ。押しても引いてもビクともしない。閉じ込

められた!と焦りつつ何度も試みるが失敗。ついに「誰か!誰かきて!」と叫んで内側か

らドアをドンドン叩いた。「どうしたんですか?」という日本語が返ってきた。そのとき

のホッとして気持ちはまさに地獄に仏。「ドアが開かないんです!」と心なしかか細い私

の声。二人力合わせてセイノッ!でやっと開いて、救出されたのだった。

一流ホテルでこうである。紙がない、ドアが壊れている、鍵がかからない、水が流れない、

などまともなトイレにめったにお目にかかれないのであった。

ツアーの大半が女性なのでトイレの良し悪しは気になるもの。いつのまにか我々の間で行

く先々でトイレを使うときは、まず1番乗りの人に「どうだった?」と聞き、「2ツ星」

とか、「3ツ星」とかのランク付けをするのが慣例になった。

他人事ながら8月に行われる北京オリンピックのトイレ事情大丈夫かなあ・・・


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