12/8のねこさん 文は田島薫
ドア待ち顔
晴れてるのにかなり寒い土曜の午後、自転車で食料の買い出しに出かけた時、ねこよ
こちょうを抜けて右折する正面にある小さな家の小さな庭のエアコン室外機の上に上
半分がくろっぽくて下半分がしろいねこが背中を四角くし毛をふくらませて座ってた。
お、久々のねこさん発見、って自転車止めて、じっと観察させていただいてると、ね
こさんの方もじとこっち見てるんだけど、なんだか居心地わるそうな顔して、困った
な〜、こっち見てる怪しい人いるけど、でも前に生け垣があるから、あそこ飛び越え
て来る気配もないし、もし飛び越えて来ても、こっちも逃げる用意あるから大丈夫だ
よな、うん、ってひとり納得してる風。
陽も当らないあんまり暖かそうに見えない場所でじっとしてるねこさんをなおもじっ
と観察させていただいてると、ねこさんの方もこっちをじっと見ながらも時おり、耳
をわきの方へ向けるしぐさをするんで、何かな〜、って思いながら、見合ってる。
けっこうしばらくの間われわれはじっと見合ってるんだけど、こっちが、親しそうに
笑ったりしてるからか敵意がないこと感じたらしく、何だかわかんないけど、ま、い
いか、って感じで相変わらず、こっち見たり、耳わきへ向けたりしてる。
やがて、何か物音がしたと思った瞬間ねこさん今いた場所から飛び下りて、わきへ急
ぎ足を運んで、見るとドアが開いて、たばこくわえたジャージ姿のオッサンが顔を出
し、開いたドアのすき間へすー、っとねこさん入り込んで行った。
ねこさんの消えた後をしばらく見つめてから、気がつくとオッサンのたばこの煙り吐
きながら私を怪訝そうにみる顔と目があった。
あいまいに笑うと、間もなく先方も事情を理解したらしく、ねこ好き同士のりょうか
いの空気が流れ、私の自転車は安心して出発した。