4/7のねこさん       文は田島薫


梅ちゃんと空を見る

先週の金曜は、朝から気持のいい青空で、シャツ一枚でも平気なぐらい暖かった。

燃えるゴミ持って外出ると、わが家のとなりのバレエ教室の前で、そこの人なつこ

い方の梅ちゃんがめずらしく人見知りのうまちゃんと軽い追っかけっこのような遊

びしてたんで、よ、って声かけて、ふたりの視線を受けてから、暖まったアスファ

ルトの小道を歩いて行き、右手の坂をちょっと上がったとこにある集積場にそれを

置いてから帰って来ると、梅ちゃんこっちを見てから腹を上に道に寝転がった。

うまちゃんは、少し離れたとこにいたんだけど、私が来たら、玄関の前にあるピン

ク色の花の植わった鉢の後ろに隠れて顔だけ出した。

うまちゃんに声かけながら、梅ちゃんの腹なでてやってるのを、うまちゃんはじっ

と見てるんだけど、居心地わるそうで、こっちもふたりが遊んでたとこじゃましち

ゃったわけだから、適当に立ち去ろうと思ったんだけど、しゃがんでついた片ひざ

から地面の温もりが伝わって来て、そのまま自宅の方の明るい茶色の花をつけた深

緑の葉が光る山桃の木を見、その先の斜めの帯び状のうすい雲がいくつか並んでい

る青空を眺めたら、そのバランスが絶妙に美しい。

梅ちゃんも立ち上がり、私と同じ方向を見てると、山桃の木の手前に下がった電話

線に小さなひよどりが飛んで来て止まった。

ひよどりはどういうわけかセロファンをくわえているんだけど、去年、わが家の外

壁にひなを育ててたひよどりもいろなもんをくわえて来て、多分巣の中のふとんの

材料にしてたようだから、これもそういうわけだろう、って見るともなく見ると、

空と、そよ風に揺れる山桃とセロファンくわえたひよどり、と私と足元の梅ちゃん

と地面がひとつにつながったまま時間が止まった気がしたのだった。

って、かなりの長い時間私らはそれらを見てたのに、ひよどりさんもぜんぜん動か

ないのは、巣の場所をだれにも教えたくないので困ってるのを、私は気がついてい

たわけで、いじわるは適当に切り上げて立ち上がった。

自宅の2階の窓から見るとすぐそばのバレエ教室の外壁のパイプのそばで羽をばた

ばたさせてて、巣の場所も私にはばればれなのだった(蛇足文でした)。


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