●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさん、庶民の永遠のテーマについて語ります。


お金の問題

私の父は印刷屋をしていたが、およそ商売人にはふさわしくなかった。というのは、

金儲けは恥ずかしいという戦前の日本人特有の建前が染み付いていて、仕事代金を請

求するのが苦手なのであった。それで母や社員が集金にいったりしていた。

昔のベストセラー「金色夜叉」の中で、お金に目がくらんだお宮への日本人の義憤を

見ればわかるように、父に限らず、もともと建前を重んずる日本人は心の片隅でお金

を軽蔑してきたのである。

そんな父の影響からか、私の頭の中にも「お金はきたないもの」という観念が棲みつ

いている。「金、金ってはしたない」とか「金は天下の回りもの」などという言葉が

いまだに頭の中で幅をきかせている。

結婚を考える年齢になったとき、「ふん、玉の輿結婚なんかまっぴらだね」と真面目

にうそぶいていた。(現実にはまったくそんな話はなかったけど・・・)

結局清貧の結婚に始まり、いまだに清貧なのはご同慶のいたり? というべきか。

(トホホ)

ところがどうであろう。最近の人々のお金へのあからさまな執着ぶりは!

政治家と金の癒着。ヒルズ族の不正な金儲け、お金で色分けする格差社会。

なるほど、お金は喉から手がでるほど欲しいのが本音。ある程度の幸せはお金で解決

できるのが今の世の中である。

その本音を自分の地位を利用して、こそこそ実行してきたのが政治家や官僚の公金着

服で、堂々と実行したのが村上社長・折口社長・ホリエモンらヒルズ族のような気が

する。

今でも印象に残っているが、村上ファンドの社長が公の場で「お金儲けはそんなに悪

いことですか?」と開き直ったのはあまりにも大人気ない。やはり、経済優先の社会

とはいえ、なりふりはかまってほしいものである。それがいま流行の品格というもの

ではないだろうか。


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