●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
シティギャル・もどきさんの好評新シリーズ5回めです。


シリーズ・銀座の街角で   

 銀座のママ2

テーブルをはさんで相対に座った。少しの間今回のインタビューをセッティングし

てくれた共通の知人の話をする。これで大分話がしやすくなる。

ママは地味目の着物に対してきらびやかな帯を心持下目に締め、ゆったりと着物を

きこなしている。着物をほめると、「着物はわたくしの勝負服ですから…ホホ」艶

然と微笑んだ。

身の上話を聞く。

離婚を経て、子供2人の養育のためこの世界に入ったこと、まず新宿からはじめ銀

座へ進出したこと、客層の違い、銀座店を買い取る際の苦労話、日本の景気が即こ

うした夜の店に反映することなど話の内容はさまざまな人間模様を語って興味尽き

ない。

そしてクラブのママとして成功する3種の神器が、美貌、社交術、気風のよさでは

ないかという私の先入観をまったく見当はずれだと否定する。

「そんなことはありませんのよ。美貌、社交術、気風のよさはメッキのようなもの。

あればきれいに見えるけど、すぐはげちゃうわね。その下からでてくるものこそ本

当の3種の神器でそれは人脈、管理能力、誠実ではないかと思うの」

「なーんだ、私の仕事と変わりないじゃないですか」

「そうね。お互い人間が相手ですから」

なるほど…納得。一連の話を聞いていて決してクラブ経営はムードだけで成り立つ

ような甘いものではなく、心からのもてなしなのだと気づいた。

水商売とはよくいったもので、原価○○円のお酒が店で飲むだけで数倍にもなるの

だから、儲かるはずである。多くの殿方が鼻の下をのばして接待されるだけでなく、

気持ちの広がりや鎮める働きもある。価格の差に客が納得し、また足を運ぼうとす

る気にさせるだけの価値をつくらねばならない。

クラブのママの気苦労は並大抵ではないのだ。

最後にエレクトーンのあったことを聞くと、

「本当はわたくしエレクトーン奏者になりたかったの。子供の頃から習っていて、

ときどき気が向くと演奏するんですよ」

これは夢を与えるママの夢だったのか。

粋な着物姿で演奏するエレクトーンの演奏一度聴いてみたいなと思った。


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