●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんがまた新シリーズ、1回めです。


シリーズ・避寒旅行〉   

 悲観なる避寒

無類の寒がり屋である。おまけに腰痛持ちである。北の国から大雪情報が舞い込み、

東京で木枯らし1号が吹くと、ああ、南の国へ行きたいなと切に思う。生来のもの

ぐさ者で、旅行を面倒だな、と思ってしまうタチなのに今回は“あったまりた〜い

!”という欲求が勝って、早速、日本で最南端である八重山諸島の島めぐりという

ツアーに参加することにした。

早起きが苦手なので羽田出発が昼の12時であることも好都合である。のんびり羽田

空港で待っていると、アナウンスがあった。搭乗予定の飛行機が札幌からくるのだ

が、大雪のため1時間遅延とのこと。

“あら、まっ!目的地の石垣島に着くのは夜になってしまい第1観光の鍾乳洞はダ

メね”とがっかり。私は旅行嫌いのくせに旅行に出てしまうと目いっぱい行動した

い欲張りなのだ。ツキのないことを悲観していると、さらに追い打ちをかけてさら

に30分遅れるという。

私は雪の降りしきる札幌を想像して、“フフ、ワタシは脱出するもんね、太陽がい

っぱいの澄んだ青い空と海に囲まれた南の島へ行くもんね”と心に言い聞かせ、ひ

たすら空港で待った。

だいぶ予定より遅くなったがなんとか沖縄経由で石垣島につく。空港に降り立った

瞬間、もわっとした湿り気を含んだ生あったかい空気に包まれる。“ああ、しあわ

せ”とまず深呼吸。空港を行き交う地元の人々はなんと半袖である。ツアー客は皆

ジャケットやとっくりセーターなどの完全武装の異様な集団と化した。

バスガイドによると島の平均気温は24度。冬でも晴れれば28度もいくそうだ。

私はここまで暑いとは思わなかった。持ってきたのは皆長袖ばかり。“事前調査も

せず、詰めが甘かった“とまた悲観した。

とりあえず夕食後ホテルの売店へかけこみ、真っ赤な半袖Tシャツを買う。前と後

ろに「琉球王国・海龍」という漢字が白く染め抜かれ龍の絵がついている。なんか

暴走族のリーダーみたい。”よし、この旅では暴走しよう“と心に決めた。


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