●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
生活哲学者もどきさん、コマーシャル見ても考えてます。
広告戦略、あなたはどっち?
私は新聞広告を丁寧に見る方である。ひとひねりしたキャッチコピーにしびれ、殺し文
句を使って訴えるボディコピーにうなり、見事なレイアウトにほれぼれする。こんな名
作に出会うと切り抜いてスクラップブックに貼っておく。
そこへいくとテレビのコマーシャルはあまり見ない。CMが始まるとトイレに立ったり、
残しておいた用事をすばやく済ませたりする時間にしてしまう。つまり私は映像人間と
いうより活字人間ということなのか。
そういうわけでテレビコマーシャルに無関心な私だが、最近考えさせられたCMが2つ
ある。それは今流行りの体にいいという緑野菜をジュースにした商品のCMで2つの会
社はライバルにあたる。
A会社は悪役で名高い俳優が(名前は忘れた)青汁を苦い顔でゴクゴク飲み干してから、
「まずい!もう一杯っ!」とコップを差し出す。B会社は大橋巨泉が青野菜のジュース
をおいしそうに飲んでみせ、「まずいよりもうまい方がいいもんね」にこやかに語りか
ける。かなりA社のCMを意識して逆をいっている。
A社は昔からある「良薬口に苦し」ということわざを味方につけ、いかにも体に良さそ
うと思わせる。B社はグルメ志向背景においしいから長続きすると訴える。
ちょっと飛躍するけれど、私はこれって子育ての仕方と一致するのではないかと思った。
昔は“可愛い子には旅をさせろ”とか“苦労は買ってでもしろ”と厳しさを強調した。
忍耐とか苦労があってこそ実を結ぶという考えだ。ところがどうだろう。今は“しなく
てもいい苦労はするな”“ほめて育てろ”と要領よくしつける。
そうするとA社が復古調ならB社は現代調のCMである。
そこで、まずいけれど効きそう、と思うか、続けるならおいしくなくちゃ、と考えるか、
さてどちらに軍配があがるのだろう。