●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん友人たちと女性美についてはだかで考察。


女を磨く

先日女三人でささやかな温泉旅行をした。夫に「おばさん三人が歩いていると風圧を感

じる」と出がけに悪口をいわれたが気にしない、気にしない。

梅雨時とあって行楽はせずにのんびり温泉三昧が目的である。


「極楽、極楽」と源泉かけ流し風呂に何度もはいった。当然化粧は洗い流す。するとあ

ることに気がついた。二人は“麻呂”よろしくのっぺらぼう眉になったのに、A子だけ

はきれいなアーチ型の眉がくっきり残っている。しかもノーメークでも目がパッチリし

ているのだ。

「それって、落ちないメークなの?」

私は無遠慮に聞いた。

「眉と下まぶたを入れ墨にしたのよ」

A子はこともなげに言った。

「しぇー!そんなことができるの?」

驚いたのなんのって…私の驚きの大きな声が風呂場にこだました。他に客がいなかった

のは幸いなことだった。

「痛かった?」「いくらかかったの?」

などと矢継ぎ早の二人の質問ぜめにA子は

「眉はいいけど、下まぶたは痛いのでお勧めできないわ。結構高いわよ」

と余裕の返事。それからはおばさん三人による湯船の中での汗だく美容会談が白熱化し

たのはいうまでもない。ダイエットにまで話がおよびお互い裸であるだけに臨場感満点。

あがって脱衣場で“入れ墨の方の入湯お断り”の張り紙をA子に指し示したらにらまれ

た。

今、さまざまなメーク商品が出回り、女優顔負けの化粧術から顔を小さくするという造

顔マッサージまで、女性のおしゃれへの情熱はとどまることをしらない。

一方で「女性の品格」という本がベストセラーとなっている。著者の坂東真理子先生い

わく、「こんな堅い本がこんなに売れるとは正直いって意外でした」

まさに美しくなって品格を身につければ鬼に金棒。

今、日本の女性は貪欲に女を磨きはじめている。日本の女性の未来は明るい???


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