1/29の日記          文は田島薫



紙屋悦子の青春

土曜の晴れた午後は地元の会館小ホールで行われた黒木和雄監督の「紙屋悦子の

青春」有料試写会へ、悩み出版社と出かけ、地元に住んでる友人、それを見損な

っていたというプロデューサーの尾形さんとも、現地で落ち合った。


大部分が中高年だったけど、ちらほら若者もいて、地味な映画だし、そんなに集

まらないんじゃないか、って思っていたんだけど、それでも3回上映で、収容キ

ャパ4〜500人ぐらいのホールの4割ぐらいがうまった。


始まると、やけに画面が暗くボケてる上に、全体が揺れている。

おいおい、8ミリか〜?ひどいな〜、こんなもんかな?金返せ〜、などと思って

見てるうちに、少しづつ、ピンも合い、明るさも揺れも直った。

物語りは、紙屋夫妻が病院屋上で、回想する形になっていて、他の場面は象徴的

にカットインする潮騒の他は悦子の居候する兄夫婦の家のセットだけで終始する

からちょうど舞台演劇に似ているんだけど、舞台のセットと違い、きちんと本物

の材料でつくられていたし、外の世界は想像力でリアルにカバーできた。

セットやロケを大規模にしなくても映画は成り立つ、ってことの教科書のような

うまい出来だった。

金に糸目つけずに何でも作ったり何でも見せちゃう、ハリウッド映画のようなも

のの一方で、なるべく見せない、ってやり方は、金をかけられないから、ってこ

とと別次元で芸術性やらリアル性を高める要素にもなるのだ。

悦子の「心の恋人」が特攻隊に志願して別れの挨拶に来る場面では、その現場に

同席してるような錯覚と哀惜感におそわれた。

しかし、原田知世は若くてかわいい、もう40ぐらいのはずだけど。


映画観賞後、横浜に舞踏家大野和雄にちなんだ舞踏家たちの公演を見に行く予定

なんで、30分ぐらいしか時間がない、って言う尾形さん自身の誘いで、先日クボ

センセーの兄貴と入った地酒立ち飲みで1杯だけ生ビールを飲んだ。


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