3/5ののらねこ       文は田島薫


愛想と無愛想

気持よく晴れた朝1に、バットマンが出勤のシャンさんと一緒に階段上がってや

って来て、おー、って声かけると、その場に寝転がって腹見せた。

ブラッシングしてやると、それはあまり好まない彼は立ち上がって、横をすり抜

けてココア食堂のエサ皿の方へ行った。


路地の見回りに行こうと階段下りながら、となりの建物のベランダを見ると、ブ

ラッキーが寝そべっていたんで、おー、って言ってみたんだけど、じっとこっち

を見てるだけ、下の階の食堂をのぞき込むと、エサ皿が裏返しになってたんでそ

っちは今朝、閉店のようだったから、ココア食堂へ来た方がいいんじゃないか、

って念力で伝えたんだけど、ふん、って顔してるだけだった。


北側路地の小さな庭の家の庭の段ボール箱の上に不安定なかっこで、くろとらが

まるくなっていて、見てると、向こうもこっちを不審そうに見ていた。


南側路地では腹の大きいぶちがマンションと駐車場のそれぞれのフェンスの狭い

すき間を歩いて行って、雑草のにおいを嗅いでるんだかなんだかのを見てたら、

振り返ってじっとこっちを見て動かないもんで、笑ったら、向こうは少し動いた。


事務所のあるビルの裏の路地を戻って来たら、バットマン2せがそばの塀わきの

階段にいるのに気がつき、お、って言うと向こうもびっくりして、だれだい?、

って顔してから、慌てて塀に上って向こう側へ下りて逃げた。

ところが私のいる路地はその塀の裏表を見渡せることになっていて、ちょっと歩

くと、隠れたつもりのバットマン2せがこっち見てびっくりしているのが見えた。

で、じっと見てると、向こうも不安そうにじっとこっちを見てるんで、しばらく

そうしていてから、行き過ぎるふりをして、建物のかげへ隠れ、また戻ると、今

まさに前足を伸ばして、歩こうとしていて、動きを止めてびっくりしてる彼が見

えたんで、また歩を建物の陰にすすめて、歩いて行って、彼が出て来るかな、っ

て離れたところから待ったけど、見てる間には出て来なかった。


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