12/31のねこさん       文は田島薫


いたいたいたー

自宅と事務所まわりにねこさんの姿なくて、朝、お、ねこさんのなき声って

思ったら向かいのアパートのガキ、じゃなかったお子さまだったりして、ね

こコラムどーする、って思いで午後、正月中の不足食品の買い足しかねて、

自転車でねこ取材に出かけた。

駅の向こう側で大量の粒コショウとサケ中骨缶を買ってから前にクボセンセ

ーがねこさんを発見した例の畑のそばへ来ると、いたいたいた、ウスチャの

トラの親子が、子どもはひとりだったけど。

近くまで行くと気がついたふたりは別々に逃げて、子どもの方は向こうへ走

り、親は道の反対側にあるそばの集合住宅のゴミ集積スペースに。

親の方はそこのごみを点検し始めて、もう私のことなんか眼中にない感じ、

感じわるいんで子ねこの方を取材させていただこうと後を追う。

子ねこはすぐ左手の小さな住宅の塀に飛び乗り、そこからとなりのフェンス

の中の例の畑に入り込んで行ったんで、自転車を下りてそれを目で追いなが

ら元来た道をまたゆっくり歩いた。

子ねこはゆっくり歩いては立ち止まり、あたりを見回したり、じっと鼻や耳

で何かを感受しようとしてるようだった。

そのうちこっちに気がついたようで、フェンス越しになんとなくこっちへ近

づいて来て、ちょっと離れたところの座り心地のよさそうな枯れ草の上に腰

を下ろして、じっとこっちを見つめる。

われわれがしばらく見つめ合ってたら、ぴよぴよぴょ、って大声でなきなが

ら尾の長い小鳥が彼の後ろの頭上にある電線に止まった、ふり返った彼は、

今度はじっとそのままそっちをじっと見つめ、私のことなんか眼中になくな

ったようだったんで、感じわりーな〜、って思ってたら、小鳥が飛び去って、

こっちのことも思い出していただけたようでほっとしてると、今度はその

もっと後ろの高架を武蔵野線の電車がごごー、って通ったのをふり返った、

私のことなんか眼中になくなって、それが行っちゃうと、また思い出してい

ただけたんだけど、またなにか虫が飛んでるのを関知して後ろをふり返った。

じゃ、私はこれで、って言ってその場を離れた。


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