●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんがまた新シリーズ、2回めです。


シリーズ・避寒旅行〉   

 チンダラカヌシャマヨー

八重山諸島は沖縄の南、西表島、竹富島,小浜島、黒島、波照間島、余那国島など

を指す。そのいくつかは台風情報のときにまず上陸する島として名前を聞いていた。

地図でみるとほんの点ほどの島々である。

2日目、曇り。まずヤマネコで有名な西表島へ深緑の海に波をけたてて船でいく。

1番大きい島だが、ほとんど亜熱帯ジャングルで人口は2000人ちょっと。バス

に乗ると港近くに島でたった1つの信号があり必要性はまったくないのだが、島の

子供が本土へ行って信号を見たことがないでは困るので教育のため設置したとか。

その目抜き通り?を過ぎるとすぐ森林になるが、やっぱりイリオモテヤマネコには

お目にかかれなかった。それもそのはずバスの地元の運転手さんさえも見たことな

いそうだ。せいぜい出てくるのはハブぐらい。

由布島へ水牛車で渡る。これがまたいい。角の長い水牛が干潟の海をゆったり、の

ったり15分ぐらいかけて行く。“あれれ、暴走族とは裏腹の緩歩族だあ”である。

私の龍の赤シャツが浮いてしまった。

途中で水牛は止まったり道草をしたり、そんなとき御者のおじぃがおもむろに三線

をとりだし、沖縄民謡を歌いだした。視界には空と海と樹林しかない広々とした空

間に歌が哀愁を帯びて流れる。皆思わず知っているサーユイユイ、(ヨイヨイ、と

やると炭坑節ではない、と怒られる)マタハーリヌ、チンダラカヌシャマヨーの部

分を口ずさみ遂に大合唱となった。

ツアー客は夫婦者、友人同士、姉妹、などさまざまだが、9人という中年女性ばか

りの大所帯がいた。職場の慰安旅行かもしれない。よくしゃべり、よく笑い、よく

食べて、よく買い物をする。とても楽しそう。もっぱら旅を盛り上げるのはこうい

う人たちであった。それにひきかえ、夫婦者のシケていること!(人のことはいえ

ない。ウチもそうなのだが・・・)家庭の延長のようなあ・うんの会話をして、窓

際を奥さんに座らせ、奥さんが旦那の世話をするパターンがほとんど。

よく旅は誰としたいか、なんていうアンケートをみると、女性は1位に友達と答え

るというが、あの開放感を見るとまさに納得である。


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