●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんがまた新シリーズ、4回めです。


シリーズ・避寒旅行〉   

 なんなるさー

竹富島は人口332名というこじんまりとした島である。遠浅の美しいビーチや星砂

のあるカイジ浜があり、そしてなによりも国の重要伝統的建造物保存地区に指定され

た家並みがある。

再び水牛車の出番。否が応でも気分はのんびりゆったりの世界に入るしかない。

きれいに掃除された白い砂の道沿いにある家は、風雨でかすれた赤い筒を並べたよう

な特徴ある瓦屋根で、上に思い思いのシーサーがのっている。周りをごつごつとした

サンゴの石を積み上げた塀が囲み、明るく清潔感がある。今にもおじぃやおばぁのに

こやかな顔が見られそうで期待して覗くのだが、雨戸が閉まっていたりして、村は静

まりかえっているのだ。生活感がほとんど感じられない。観光化とはこういうことか

とがっかりした。

時間の止まったような村。人気のない過疎の村。その村を御者のひく三線の音色でム

ードに浸る観光客が笑いさざめいて非日常を過ごして行く。これが現実なのだ。

そしてもう一つの現実。添乗員と仲良くなってこんな話を聞いた。

石垣島をはじめこの付近の島の人たちは気候風土の影響か、のんびりとおおらかな気

質なのだそうだ。「なんなるさー」(なんとかなるさの方言)という言葉でなんでも

片付けてしまうという。面白いことに離婚率がかなり高いという。当人同士は我慢と

いうことをせず、周りもそれを深刻に受け止めず「なんなるさー」と容認してしまう

とか。

うら若い女性添乗員は静岡出身なのだが、南の島に憧れて石垣島に住み、沖縄周辺の

島めぐり添乗員として働いているのだが、このなんなるさー気質がそのまま身につい

てしまい、本土へ復帰したとき、競争社会のテンポについていけるかどうか本気で心

配をしていた。


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