9/4ののらねこ 文は田島薫
かおあらうねこ
涼しくなって来たと思ってたら、9月に入ってまた少し暑さがぶり返し、出勤しても
ココア食堂の皿は空になっていたものの、ねこさんの姿は見えない。
で、しょーがないので、また近所の路地を見回りに行こうと思い、事務所を出て、
1本目の路地へ入って行こうとして、反対側の家と家の間のに目をやると、1番奥で、
くろとらが正面を向いて座り、前足をなめちゃ顔をぬぐっていた。
じっと見ていたら、それを何度も何度もいつ果てるともなく繰り返していて、全然
こっちに気がつかないもんで、気がつくまで見てよう、って思ったら、いつまでも
きりがない、で、ふと、かおあらいねこのフェンスの後ろにもうひとり黒いねこが
こっちを怪訝そうにじっと見てるのに気がついた。
黒いねこの方はこっちをじっと見続けて、何だあの人はって思ってて、こっちはあ
っち見てなんだもうひとりねこさんいて、こっちを怪んでるな〜、って思ってる間
で、くろとらがせっせせっせと前足なめちゃかおぬぐってる。
ずっとながめてる私の視角のはじっこに向こうから若い女性が歩いて来るのが見え、
やがて私のそばまで近づいた時に、や、そんなに熱心に見てたわけじゃないよ、っ
てポーズにしようと思い、少しわきによけてちょっと視線を変えてたら、その女性、
通り過ぎる時、ちら、っと横目で私のさっきの視線の先を確認してた。
私もすぐ視線をもとに戻すと、後ろの黒いねこは、なんだか不安を感じたかのよう
に向こうへ逃げて行くとこだったけど、その前でくろとらはせっせと、かおをぬぐ
い続けていた。