3/13ののらねこ       文は田島薫



ないよーないよー

きょうは朝、天気いいんで、セーター薄いのにしてきちゃったら、シャンさん

が、きょうは寒いね〜、っていうので、は、っと初めて気がついて、そん時、

北風がぷー、っと吹いてゾクっとしたのだった。

そんなわけで、お客さんたちココア食堂に顔見せないようだ。

だもんだで、心細いアテとセーターのまま、路地へ見回りに出かけた。


一本目の路地の入口入ったら、お、向こうへうす茶のねこさんが歩いて行く。

いいねいいね、って一緒に後を歩いて行くと、右側通行だったのが、ななめに

道を横切て、左側通行に変更、こっちに気がついてないはずなのに、急に早歩

きに速度も変更、左のもっとせまい路地に曲った。

見ると、つきあたりはどっかの家の玄関で、そこまでコンクリの飛び石のアプ

ローチになってて、ねこさん、映画祭の授賞式に招かれた客のように(何だか

意味わかんねーぞー)、そこを、歩きにくそうに進んで行く。

玄関誰かが開けてくれるのか、自分でノックするのかな、って思ったら、どっ

ちもなしで、そこをまた右に曲って視界から消えた。


ニ本目の路地に行くと、弁当屋の前に止めたスクーターの向こうにグレーのね

こさんの背中が見える。

なんだかもぞもぞ、動いてるんだけど、何やってるのかわからないので、しば

らく見てて顔出すのを待ってたら、いつまでたっても顔出さず、背中がもぞも

ぞ動くのを見てるだけ、回りにはなんだかわからないボール箱のようなものが

いっぱい積まれてて、ねこさんそのすき間で何かやってるんで、スクーターの

上に身体曲げてのぞきこんで見ようかな、って思ってたら、入口からボール箱

を重ねて持った人が出て来て、私は道を開けたんだけど、私が動いた方へ行き

たいらしく、また動いたら、またそっちで、なんだいななめに道行きたい、っ

てことで、ねこさんとの間を引き裂かれてしまったんだけど、また戻るのもめ

んどうなので、その場を離れた。(手抜き取材ですまんっ)


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