3/6ののらねこ       文は田島薫



バットマン感傷す

ここんとこずっとバットマンはココア食堂に足繁く通って、せっせと食事して

るんだけど、今朝はちょこっと食べてすぐに下へ下り、2階の奥の住人のドア前

に行って、裏返しになったままの紙皿のあたりをうろうろしていた。


そこの住人は、1年ぐらい前だったか、エサを出すようになって、けっこう、う

ちで出すエサより、旨いらしく、ねこさんたちに好評で、それから、ココア食

堂に閑古鳥が鳴くようになっていたんだけどが、どう言う事情か知らないけど、

突然閉店し(時々新聞が入ってるのを目にするから、いないわけではなさそう

なんだけど)、バットマンを筆頭にうちにお客さんが戻って来てたのだ。


いつものように、やって来たバットマン、ココア定食食べ始めて、ふと、あれ、

もっと旨いもん食ってたことあったよな、あ、そーだ、2階のあそこだ、って、

閉店してること忘れて、足向けちゃったんだろう。ねこさん、記憶力悪い、っ

ていうから。だって、さんざんお馴染みの私を見て、時々逃げることがあるし。


で、行ってみて、あ、閉店しちゃったんだったっけ、でも、こうやって、うろ

うろしてると、ドアが開いて旨いエサが出て来るかも知んないよなー、って。

んー、出て来ないか〜?

やー、あの旨いエサ出てた頃はなつかしーなー、あんな3階の安いエサなんかと

違う、ちゃんとしたもんだったな〜、って。


彼、しばらく感傷に浸ってから、あきらめてまたココア食堂に引き返すはずだ。


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