7/18ののらねこ       文は田島薫


真直ぐなねこ

きょうは朝からじめじめ雨で夏のわりにうら涼しい。

ねこさんにとって過ごしやすいんだか、わるいんだか、判断に迷うんだけど、

そんなこと私が判断しなくてもいいのかも知れない。


ココア食堂もそんな微妙な天気を反映してか、お客さんは顔を見せない。

で、恒例、路地見回りに行った。

北側の路地を見回すと、小さな庭にもだれもいないし、歩いてるねこさんも

見当たらないんで、建物と建物の間をのぞいて歩いてると、いたいた、中肉

中背のとらが手前の鉄柵のはるか向こうからずんずん歩いて来る。

じっと見てて目が合うと、けっこう立ち止まったり横の方へ逃げて行くねこ

さんも多いんだけど、このとらは歩みを止めずに、同じテンポでずんずん歩

いて来る。

で、鉄柵の間をする、っと抜けて、私のそばもずんずん、と普通に通り過ぎ

て道を渡り、反対側の建物同士の間を向こうへずんずん歩いて行く。

向こうのつきあたりにはアパートの外階段があって、どうするのか見てると、

それをずんずん上がって行き、2階の踊り場から続く塀に飛び乗りまた真直ぐ

向こうへずんずん歩いて行く。

行く手には壁とその上の手すりが立ちはだかっている、どーすんのかな〜、っ

て見てると、難無く壁をよじのぼり、手すりに飛び乗り、ずっとはるか向こう

に続く手すりの上をずんずん歩いて行き、向こうの手すりの向こうへ飛び下り

て視界から消えた。


昔クボセンセーがバイクにはじめて乗った時、曲るのが怖い、って理由で、ど

んどん道を真直ぐ走って行き、遠いとなりの町に着いたら、一度下りて、向き

を変え、また真直ぐ走って帰って来た話を思い出したんだけど、あのとらは、

曲るのが怖い、というより、曲ることがきらいだ、ってタイプと私は見た。


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