6/19ののらねこ 文は田島薫
小さな庭からねこあふれる本格的夏の朝、ワールドカップの渋いゲームの後の冴えない頭で、階段上がって行
くと、2階の踊り場からつづく物置きの屋根の上でバットマンが寝てて、おーいっ
て声かけても、気がつかない、ふりしてるのか耳が遠いのか。
昼すぎに近所の路地を見回りに行くと、北側の路地の小さな庭の家の庭に、にせバットマンが何かの台の上にいて、その向こうの横にした段ボール箱の中に三毛がい
て、ふたりともこっちを見てる。
こっちもじーっとふたりを見てると、ふたりもこっちじーっとを見てる。
この庭はいろんなねこが来ては、寝そべって行く所で、見るたびに違うねこがいる。
にせつーとん、とら、グレー、それに各柄の子ねこ、それにきょうの、三毛やにせ
バットマン。
じーっと見合ってるのにも、ちょっと飽きたので、こっちが先に目をわきにそらし
たら、垣根のよこに、子ねこさしあげます、って書かれ、カラー写真が4ひき分4枚
ついた紙が張ってあった。
でも、その写真の子ねこたちの姿は見えなかったんだけど、やっぱり、この家の主
人も、ちょっとねこさんの出入りが多過ぎるな〜、って困ってるのだろう。
夏には不人気になるらしい南側の路地の弁当屋の前には、さっきの写真のひとりらしいとらの子ねこがたたまれた段ボールの上で丸くなって寝ていた。
子ねこも、自分が売りに出されている紙のそばで寝るのはあまり気分がよくなかっ
たもんで、少し暑いここで我慢してるのかも知れない。