●新連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回は謙虚で美しい普通の婦人による、国民だれもが感じるべき、まっとうな怒り。



アタシも言いたいっ!

17日のニュースにふれると、さすが温厚なアタシも「世の中狂っとる!責任者出て来い!」

と叫びたくなる。だからといって責任者がいてノコノコ出てくるわけでもないが…。

1月17日ニュースその1。ちょうどその日は阪神大震災11年目にあたる。皮肉にも同じ日偽装

マンションの建築主、ヒューザーの小嶋社長が国会で証人喚問をされた。

あの大災害のあと、耐震強化をあれほど声高に叫ばれながら改善されるどころか、作為的に

耐震データを偽造している。震災の教訓はなぜ生かされなかったのか。人間不信だあ!

1月17日ニュースその2。連続幼女誘拐事件の宮崎被告に死刑が確定した。宮崎被告からは

ついに被害者への一言の詫びもなく。この裁判に関して、裁判所は判決を言い渡す役目だか

らなのか被告の責任能力だけを争点にしていた。もっと背景にある社会環境や教育問題を考

える場にして欲しかった。こんな大事なとき社会学者や心理学者や教育学者は何をしていた

のか。このときとばかりに声を大にして現代社会の病理をえぐりだし、世の中に警鐘をなら

すべき立場なのに。怠慢だあ!

1月17日ニュースその3。堀江社長に証券取引法違反容疑でライブドア捜索。皆様ご承知の

ようにその後ホリエモンショックとなって経済界に大波乱を巻き起こすこととなった。

ホリエモンは創業わずか10年で資本金600万からなんと862億円(数字:毎日新聞)に

殖やしたというベンチャーの旗手である。マネーゲームだ、アメリカ型市場原理主義、だと

いって勝ち組に躍り出た。でもさあ、法に触れなきゃ何をやってもいいのかい?君たちの辞

書には社会貢献という字はないのかい?ずるいぞお!

ツラツラ考えるにこの3つのニュースの当事者たちに共通するのは自己愛と全能感のような

気がする。自分さえ良ければいい、何でも自分はやってのけられるという誤った自信過剰だ。

昔の日本人はもっと謙虚で利己心なんて少しもなかった。歌舞伎を見ればわかる。ほとんど

のテーマがお家のため、親のため、愛する人のための行動だ。利己心はもっとも野暮とされ

る美学がある。極端な話、鼠小僧という盗人は法に触れたことをしたが、盗品を貧乏人に分

けてあげたということで庶民に人気があったではないか。ま、IT時代に鼠小僧の例えでは

あまり説得力はないが、要するに世のため、人のためという倫理が機能していたということ

だ。

戦後は平和憲法のもと、無から始まってこつこつと日本を経済大国に育て上げた日本人の勤

勉さ、民主化にすぐ順応し自由社会を築いた賢さ、日本人の美点はいくつもある。

きっと高度成長後の時代、1億総中流意識を持った頃から変わってきたのではないか。なん

でもお金で手に入る、高学歴・高収入が幸せと感じる風潮が、今になってささくれたご時

世をうみだしたのではないかとアタシャ睨んでおる。

小泉首相にも失望した。総選挙でそんな小泉さんを圧勝させた付和雷同の日本人にも失望し

た。アタシの愛国心をどうしてくれる?


戻る