●新連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回は最後のクライマックスに到達するまでの長い導入部付き名文。
賞味期限
冷蔵庫の中がだいぶ隙間が出てきた。正月用に買い込んだ食糧が減ってきたのである。それでも奥の方にまだ何かが残っているようだ。取り出してみると、封を開けていない
昆布巻きが1本と鳴門巻き。あっ、ウインナー、納豆も3パック手付かずだ。一応賞味
期限を確かめる。決して慌てない、騒がない。
私はおおむね賞味期限を守らないほうなのだ。賞味期限から2〜3日経っていようが平
気で食べる。納豆、ヨーグルト、牛乳など5日ぐらい過ぎても大丈夫だ。卵にいたって
は安いときに買いだめして半月くらい使い続ける。
若い人に話すと「えっ!」と驚かれ、原始人をみるような眼で見られてしまう。私は
ひるまずお腹なんてこわしたことないもん、と威張って、大体過度な無菌状態は人間
のココロもカラダも脆弱にするのです、と説教をたれる。
大体今の若い人は神経質といおうか、思い切りがいいというか、パッパッとよく捨て
る。デジタル世代の考え方だと、賞味期限を境に食べ物が急速に腐るのだと思うのだ
ろうか。
もったいない、食べ物を粗末にするな、と頭に叩き込まれた世代としては許せないの
だ。昔から目で確かめ、匂いをかぎ、手で触る、舐めるなどで判断する知恵があった
ではないか。五感を大事にしろといいたい。
ところで、話は変わるが、先日3人の友人とランチした。その中のとびきりの美人が
こんな話をした。
「私、正月ゴルフにいったのよ。運転できないから一緒にまわる男性の車に便乗させ
てもらったの。その人ちょっといい男。帰りね、その男性が助手席の私に『襲わない
から寝ててもいいよ』なんて笑わせながら、気をきかせていってくれたの。でも運転
してもらってるんだから悪いと思って寝るまい、寝るまいと眠いのを我慢していたん
だけど、朝早かったせいか、いつのまにか寝てしまったみたい。男性いわく『よだれ
たらしていびきかいてたよ』だって。もう恥ずかしいのなんのって…」
「女も素敵な男性を前にまともな会話もできずに寝込むようじゃ、もうおしまいね」
もう一人がぴしゃりと言った。
この話を聞いて私は女の賞味期限は意外と短いのだと悟った。