●新連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回は歴史のない国の人に、文化の味がわからなかった、って話。



おでんは文化だ

この季節、おでんの出番が多くなる。今夜はおでんというときは、朝、大根と昆布と

こんにゃくを出し汁で少し火にかけ、そのまま座布団でくるみ保温しておく。夕方に

なるとそれらは味もしみこみほどよく柔らかになっている。それから練り物を入れて

コトコト30分位煮込む。練り物は長時間煮込むと汁のほうにうま味がいってしまい、

おいしくなくなるからだ。我が家ではこうして2段構えでおでんを仕込む。

私の好きなのは大根とはんぺんと油揚げを真ん中で切って袋にして中にお餅を入れて

かんぴょうで結んだもの。その日の献立はおでん鍋に白菜などの漬物、茶飯、それに

辛口のお酒『剣菱』の熱燗でじゅうぶんだ。

迷い箸はお行儀が悪いとされているが、思わず鍋の上で何を選ぼうかと箸がとまって

目が泳ぐ。まるで宝箱を開けたような楽しみがあるのもうれしい。

あるとき、来日したばかりのアメリカ人を我が家に招いておでんを振舞ったことがあ

る。

結び昆布をお箸でつまみあげ、This is a sea weed. とやった。(“海の雑草”とはいか

にもまずそう)さつまあげを指して,Its made from fish.(ofか ftomか大いに悩む)ちく

わやつみれやごぼう巻きなどこのセンテンスですべて済ます。こんにゃくにきてさて

困った。こんにゃくいもなど見たこともないし、製法も知らない。Probably, this is

made from vegetable. I dont know so much. と逃げた。相手はぷるぷるしているこんに

ゃくを気味悪そうに見ていた。

お世辞に、Deliciousといってくれたが、私の説明が悪いのか口に合わなかったのか、

もっぱらゆで卵とじゃがいもを食べていた。

そして最後に日本人は魚文化なのですね、といった。

そうなのだ。我が意を得たり。魚がこんな風に姿を変えて煮込まれて絶妙な味をつく

りだす。これを文化といわずしてなんといおう。


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