●新連載
クーニーズ 文はえんどうくにこ
世間の荒波を凛々しく乗り越えて来たベテランOLエンドーが
世間の矛盾、不正?を次々あばいて行きます!…多分。
今回は、だれでも人生で直面する重い話の受け止め方について…。
悪夢
8月5日、78歳の誕生日を迎えるた我が父。体調不良につき検査中。本人はい
たって元気。
8月11日、悪性リンパ腫と判明。最悪、余命一年と宣告。
なかばの覚悟はしていたものの、まさかのほうが8割だった。
事務的に優しくユーモアまじえて、担当主治医はパソコンの画像を元に淡々と検
査結果を1時間にわたって説明してくれた。
心臓を突きぬかれる感じが一瞬した。目の前のおびただしい画像フィルム。全身
に諸悪の根源といえる白いものが現われている。なにコレ?他人の画像では?と
父の顔と見比べては息が詰まった。
『人はいつか死にます』から始まり、『ハッピィ・ライフをおくりましょう』で
しめくくられた診察室での1時間はかつて経験したことの無い、無呼吸の意次元
の世界。家族は冷静である。頭の中に1年という言葉が焼きついてどうしようも
ない。抗がん剤の話なんてまともに聞いてられなくて、延命治療という言葉だけ
がつっかかる。なのに我が父は『80歳までは生きたいですな、先生』と笑いな
がら話すのだ。
本当に恥ずかしいけど、お父さんを抱きしめたいと思った。
そしてなんて強い人だと、頭の下がる思いと同時に、誇りに思った。
バカみたいに涙ぐんでるのは、なぜか自分ひとりだけ。
『アリガトウゴザイマシタ』と頭を下げて病室をでる家族たち。ちっともありが
たくないのにと仏頂面の自分。
来るときが来た。受け止めなければならない現実。決して強くは無い自分である。
さて、一体なにからどうすればよいのだろう?頼りがいの無い娘は夢から覚めて
悩んでいる。