4/17ののらねこ       文は田島薫



続、春のねこさんたち

きょうは花々も咲き乱れ、気持いい晴、ココア食堂のエサ皿は出すと、午後

には空になっていて、やっぱり忙しいお客さんたちいつの間にか来ては、急

いで食事しちゃー、さっさと帰っちゃってるようだ。


エサ足しながら、シャンさんにお客さん見たか聞くと、下でバットマンが寂

しそうにしていただけだって。

食事に来たら皿が空だったのかも知れないと思いながら、となりの建物のベ

ランダを見るとバットマンがいて、しきりにそこの敷物のにおいをかいでい

るので、おいバットマン、エサあるぞ、って呼んで言ってみると、ちょっと

顔を上げてこっちを一瞥しただけでまた作業を続けた。

今はそっちの仕事の方が大事のようだった。


昼飯用のキャベツを買いに行くついでに、近所の路地を見回りに行ってみる。


南側の路地の赤く咲いた椿の木の下、枯れて落ちた花びらや葉っぱが掃き集

められてできたベッドの上でグレーのストライプ柄のねこが丸くなって時々

足をけいれんさせながら気持よさそうに眠っていた。

弁当屋のバイクの裏にはうす茶とグレーのねこが仲良く座っていて、こっち

と目を合わせると、こっちはひとりなのに、向こうはふたりしてずーっとこ

っちを見ているので、こっちもずーっと見ていたんだけど、やっぱりおたが

い話題がないもんで、目をそらして帰ることにしたら、彼らにひとこと別れ

のあいさつをした方がいいかな、って一瞬迷ったんだけど、それほどの関係

じゃないな、ってことで、ちょっとまゆを上げた合図だけにした。


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