9/20ののらねこ       文は田島薫



連休のココア食堂

連休明けの事務所ドア横のココア食堂には午後になってもお客さんの姿がない。

カラスさんが来て、手すりに止まって何か言って帰って行くだけだ。

もっとも、カラスさんもエサたっぷり食べるから、お客さんって言ってもいいん

だけど、あのひとたち(人じゃないっ)は皿を引きずったり、裏返しにしたり、

エサを周囲に散らかすので、ちょうど「若い頃の」私が何軒かの居酒屋で嫌われ

たように、そんなに歓迎されてないのだ、でも、じゃなくて、だから、私はカラ

スさんに共感もしてて、嫌ったりはしない。


連休1日めの土曜に、翌日誘われた稲刈り大会に持ってくのにちょうど手頃で小

汚いバッグを、わざわざ電車乗って、事務所まで取りに来た時、先週末の金曜に

皿いっぱいに入れておいたエサが、午後だといえ、もうほとんどなくなりかけて

いて、おまけに皿は1メートルも引きずられていた。


こりゃまたカラスさんか、って思ってると、広い方のベランダから珍しくくろと

らが出て来てわきを抜け階段を逃げて行った。

おいおい、大丈夫だよ、って呼ぶと、2階の踊り場で立ち止まってこっちを見て、

どうしようか、って考え込んでいる。(よくあるパターン)

しばらくそうしてから、ま、今上がって行ってあの人に気使いながらエサ食べる

のもやだから、後で出直して来よう、って考えたようで、今度はゆっくりと下り

て行った。

私は皿にエサを山盛りにしてから帰った。


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