10/31ののらねこ       文は田島薫



バットマン味に迷う

今朝は少し曇ってたのに、午後は秋晴れ、ねこさんたちは紅葉狩りにでも出か

けたらしく、だれも見かけない。

先週末の朝はバットマンだけいたから、ひょっとすると、彼だけおいて行かれ、

それに気づいた彼も今朝は出かけたふりをして強がってるのかも知れない。


で、週末の朝バットマンは2階の踊り場にいたけど、上がって来なかった。

3階ドアよこココア食堂の皿のカリカリメニューの上には、昨日の定例宴会で

映画プロデューサーが食べ残したそーめんが乗ってほぼ昨日のままだった。

どうもそういった残り物を追加サービスしとくと、いつも評判が悪いようだ、

ってことは分かっていたんだけど、今回ははっきり拒否されてる感じだった。


おーいバットマン、って言いながら2階に下りると、彼は私を案内するように、

ベランダの通路の奥の方へ行ってから、何か言いたげに振り返ったので、見る

と足元に白いプラスチックの空のおわんが2つ並んでいた。

そこの階の住人がうんまいエサを出してたんだろう、あんな変なもんが乗っか

った安いエサじゃなくて、ここに入れてもらえるやつをくれっ、って彼の目が

言った。


おいおいそんなこと言われたって、うちにはうちの経済事情ってもんがあって、

「贅沢は敵」をスローガンに使ってるんだよ、って目で言ってやって、手招き

して、3階まで誘導したら、分かってくれたのか、こっちが彼の言うことを分

かったんだろう、って思ったのか(こっちの公算の方が大)、素直に上がって

来たので、ちょっとサービスに新しいカリカリを少し追加してやったら、納得

しない表情でそばまで行って、ふたつぶみつぶ食べてから、すぐに下へ下りて

行って、またおわんのあたりで、未練がましくうろうろして新たな展開を待っ

ているようだったが、展開はないのだった。


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