10/17ののらねこ       文は田島薫



みんな冬眠の準備か

少し雨空の中出勤した今朝もやっぱり、お客さんの姿はどこにも見えない。

(先週の書き出し流用)

出勤途中の路地の玄関前スペースで毎日寝てたつーとんが、先週ぐらいから、

いなくなった。


つーとんは一昨年ぐらいは事務所にエサ食べに来て、昼寝をしたり、遊んだ

りしてたんだけど、寒くなったころ、近所にある別の七曲がりっていう由緒

ある路地にある家の前で箱と毛布を用意されて、彼の子供とみられる兄弟と

一緒に丸くなって過ごしてるうちに、事務所の方へはほとんど来なくなって、

道ばたで会ってももうこっちの顔を忘れてるようになり、今年になって、反対

方向にある例の路地の例の場所で毎日寝るようになって、声かけても私のこと

はもう、はっきり忘れてしまっていたのだ。


また、だんだん少し寒い日があったりして、あの玄関前スペースのコンクリの

上だと居心地が悪くなってきたので、冬用の場所に移動したのだろう。

玄関前スペースは彼の避暑地の別荘といったとこだったんだろう。


多分七曲がりのあそこの家へ戻ったんだろう、って思って、さっき郵便局へ行

くついでに見てみたら、新しい箱に新しい毛布がきちんと敷かれていた。

彼の姿はそん時、見えなかったけど、冬眠の準備は一応大丈夫そうだ。


他のお客さんたちも、どっかいい場所探したり、見つけたりしてるもんで、

来なくなっちゃってるんだな、って思っている見捨てられたセンチメンタル

ココア食堂であった。


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