今週の雑感(昔のもありの) 文はさぬがゆたか
ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だよりです。
感動もあり、そーでもないのもあり、で、謙虚にタイトルは雑感のまま。
前前前回の続きは今回もまた休んで、まだ続くインターミッションです。
「静寂ナイト」
今回は季節はずれの北欧ノルウェーでのちょっと恐かった話。
スウェーデンの中央オーレと言う村で数日を過ごしたあとにバスに乗りノルウェーに
向かって国境を超えることになった。
とは言ってもどこから「ノルウェーの森?」の前編の緑なのか赤なのかもわからない
状態で国境を超えるわけで延々と延々と森林が続く。国道沿いの広告看板もなく時たまバスめがけて走り寄る犬がいれば、数件の集落があるという程度。
赤茶けた濃いペンキで塗られた壁面に白淵どりの窓枠は、おだやかな絵本のワンシーンにも見えるけど、実は一番安価なペンキの色で寒村を意味するとも聞いた。
バスの横に舞い上がる雪、真っ黒な森林とやがて傾く陽だけで時間が過ぎるのを感じるけれど、やっぱり荒い山肌と何回もトンネルを通過することで、ノルウェーの西側
に近ずいたことを知る。
フィヨルドの絶壁沿いを走る。真っ赤な夕日と真っ黒な絶壁とバカ正直に静かな海面のフィヨルド。
西の端からの最終列車到着地点に位置する小さな村に今夜は泊まることになっている。
いろんな観光マップに必ず記載されているはずなのに、それは申し訳ないくらい小さな街でもあり観光船の係留地点だった。
鏡のような水面とはよく言ったもので、何枚写真を撮ってもどれもがなあんにも動いていないだもんさ。
小さなホテルにチェックインを済ませ、その晩の食事もそのホテルで本場もんのノルウェーサーモンを堪能した。音楽の一切ないレストランに響くナイフ&フォークの金
属音と小さな会話だけってのも最初は心地良かったのだけど、そのうち酔いにまかせ
て一緒したツアーの女性の一人が、かつて某エアラインの機内添乗員教育の際の起き
た事故の話しを切りだしたのよ。
ジャンボ機の緊急脱出練習時の際、大きく開いている出口との距離を勘違いして過って転落死した事故のことなどを丁寧に語ってくれたのは良かったんだけど、どうにも
こうにも一切効果音のない静寂さが効くんだわ。
地ビールとサーモンでたっぷり深夜になった頃に「じゃあ、お休みなさい」って解散したまでは良かった。
小さなホテルの端っこの部屋までの靴の音。ドアを開ける音。自分の酔っぱらった呼吸以外なにも聞こえない静寂さに気ずいてしまったらもうダメ! 恐いんだ。
部屋にはテレビはもちろんラジオもない。薄暗いランプがあるだけで本も満足に読めない暗さじゃないか。
窓からは雪あかりにぼんやり映る山々だけで萎縮しちゃったのであります。
音がまったく一切ないってことの恐さ不安さ。
いかに音まみれの生活で過ごしていたのかって思うのと、これがノルウェー流ホテルの楽しみ方なんかとも思うんだけどベッドに入っても能がキンキンしてきちゃってさ。
カーテンを閉めれば閉めたで誰かが立っているようにも感じるし、真っ黒な空にはカラスが飛んでいるんじゃないかって思うほど。たいした酔っぱらいなんだけど空想に
も限界があってほしい夜だった。
結局その晩はほぼ眠れずクタクタ状態で朝食のテーブルに付いた。
今日は大西洋に面するベルゲンって港街までまたバスに乗る。運転手が趣味で聞いているんだろう小さなラジオから流れるユーロポップス。普段は苦手なサウンドなのに
なぜか安堵感も感じるしディーゼルの連続エンジン音にも癒される。知らず知らずに
自分って身体はそんなん風になってしまっているんだろうか。
そう言やあ、家でもけっこう一晩中CDが流れたまま朝を迎えることがあるんだよ。
成熟していないんだろうか、これも恐いかも。