●新連載
クーニーズ          文はえんどうくにこ


世間の荒波を凛々しく乗り越えて来たベテランOLエンドーが
世間の矛盾、不正?を次々あばいて行きます!…多分。

今回は完全試合目前で、打たれっちゃった悲劇の親子、ってお話。



人の振り見て何とやら・・・

どうしても世代の違いに関する苛立ちばかり目立つ今日この頃。

それによって、ますます自分の年齢を感じてしまうことばかりである。虚しい。

3月は何かとイベントが集中する時期、ことさらサービス業関係に殺到する。

卒業旅行だの、年度末の集いだの、新人研修会だの、温泉好きの私にもその余波

を被る破目になってしまった。

わりとひいきにしているそんなメジャーでない、でもひなびて小さくもない、

伊豆の温泉に母と二人で訪れた。

どちらかといえば中高年層のカップルが多く、団体客をとらない、幼児連れの

家族がいない、というおとなしめの客層と雰囲気を兼ね備えたお温泉旅館である。

大浴場の混乱はすさまじいもので、例の耳障りな“チョーむかつく”だの“ありえ

な〜い”だのが飛びかっている。

うるさいだけでなく、脱衣所からいきなり露天風呂へドボン!おいおい、汚いなぁ、

体くらい洗ってから入ってよ。

桶の中に石鹸は入れっぱなし、シャワーも出しっぱなし、なんてだらしない。

おまけに首やら腕にはシルバーのネックレスやらブレスレット、指輪ががジャラ

ジャラ!あのねぇ〜、ここはリゾートホテルやラブホテルじゃないんだけど?

母の目はといえば、怒り狂ったのを通り過ぎてもう涙ぐましいの寸前。二人で

「呆れたぁ!」と苦笑い。

湯上り処での美味しい生ビールも、煙草をプカプカ、大胆に組んだ浴衣の裾から

太ももあらわな彼女達とまた一緒!?

とそのとき、ある年配女性が『あら、浴衣は左上よ』と私の胸元をそっと指差して

微笑んだのだ。

しまった、右上だ、逆に着てるた!『まっ、恥ずかしい、急いで間違えちゃった、

どうも』とあわてて照れ隠しの私。

すると、隣にいるはずの母が他人のふりをしてさっと私から離れていなくなるのが

解ったのである・・・



戻る