3/7ののらねこ       文は田島薫



お客さんつかまえろ

気持のいい晴れの天気、事務所に出勤すると、朝1のシャンさんがあいさつに

続いてねこさん情報なし、って、先々週から大体同じ。


じゃ、しょうがない、ってことで、いつものように、先週なんかあったっけか

なー、って展開も同じ。

先週はけっこう忙しくて、ドアの外チェックをひんぱんにやらなかったせいも

あるんだけど、全くねこさんに会えなかった。

それでも、一度、近所の買い物から帰って来たら、(忙しくても、酒だの、野菜

だのチョコレートなどの買い出しにはしょっ中出る、事務所のすぐそばにある

地蔵通り商店街は安いし、なんでもそろって便利なのだ)ドア前のベランダの手

すりに、カラスのカースケがいる。(もっともいつも同一人物の保証はない)

おーカースケ、って声をかけて、よし、この際、ねこさんじゃないけど、この

お客さんで、文章書いちゃおうか、って魂胆で、逃がしちゃいけない、って、

いろいろ話しかけてると、彼の方もちょっととまどってるようだけど、ちょっと

体を向こうにぴよんぴょんと移動させてから、何か考えてるふうにして、首かし

げたりしながら、聞き耳をたてて逃げない。

しばらくふたりで話しこんで(?)から、彼はふいに飛んで行った。


てことを書こうとしてたら、ベランダ側のガラス戸の下半分のエンボス部分に

黒いねこかげ。

黒とらがしょんに来たかと、上の透明部分からのぞくと若とらで、そっちも

こっちを見上げている。

お客さん、ってぐっと見つめて、逃がさないようにしてたら、向こうもじー、

っとこっちを見て、何かこっちの表情から読み取ろうとしている。

ただ時間かせいで、にらめっこして、なんとかコラムの文を埋めようと思ってる

だけだ、って、読まれちゃうかな、って思ってたら、その通り読まれたようで、

何だ、って顔をしてから行っちゃった。


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