6/13ののらねこ       文は田島薫



足元のねこさん

かー、っと本格的に夏が始まった今朝も、毛皮のお客さんたちの姿は見えない。

(先週と同じ書き出し)

カラスさんが何回か来たんだけど、声をかけるとたいてい首かしげてから飛ん

で行っちゃうので、あんまり話の種にならない。


だもんで、私の自宅のとなりの家にいるねこの話を。

彼はたいてい家の中にいるようで、たまに2階のガラス窓に体をくっつけて外を

見ていたり寝てることがある他、日曜日に玄関の外でそこのだんなさんにだっこ

してもらってたり、近所のご婦人たちに囲まれて、話題にされてたりしている。

付近にいるちょっと汚れた毛並みののらねこたちと違い、なんとか、って種類の

小奇麗なねこなのだ。

グレーのぶちで、愛嬌のある扁平な顔で、だれでも、おー、って声かけたくなる

ようなルックスなんだけど、当人はけっして甘え声を出すようなんじゃなくて、

いつもキリっとした表情で人の目を見返す、骨のありそうなやつなのだ。


先週末の朝は、めずらしく彼が家の玄関の外にひとりで座っていた。

他の連中だったら、私の姿を見た時、私の進路とは別な方向へ移動して様子を

うかがったり、とっととどっかへ行っちゃうかどっちかなのに、彼はじっと動

かないで、私が右側通行で歩いて行く道の縁30センチのところに居て、すれ違う

時も、キリっとこっちを見上げてて、私がおー、って声かけると、そのままの、

姿勢で、目が、ん?、っと言った。


私はこのごろこんな時でも、しゃがんで頭なでるようなことはねこさんになんだ

か失敬な気がしてあまりしないのだ。


ずーっと歩いて行って角で左折する時見てみたら、彼はまだこっちを見ていた。


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