7/19ののらねこ       文は田島薫



汚なくろはなぜ泣くの?

本格的真夏の休み明け、出勤して階段上がって行くと、2階の踊り場のよこの

ベランダの端っこにバットマンがよこになってた。

おー、バットマン、って声をかけると、こっちを見てから、ちょっと伸びを

したけど、またそのまま寝転がっている。


冬ののらねこも辛そうだけど、夏のねこも暑くて大変そうで、どこかぐったり

しているようにみえる。さっきは老犬と老人がふたりで今にも行き倒れしそう

に、よろよろ歩いてたけど、それでも孤独な感じはしなかった。

でも、ねこはいつもたいていひとりぼっちだ。

夏の日の昼間など、人も動物もあんまり見かけない時、ものかげにねこがひと

りでいる。


先週もねこの出入りはあんまり見かけなかったけど、みゃ〜みや〜、ってねこ

さんの声がするのでドアの外へ出てみると、向かいの建物のベランダに汚な

くろ(中の毛が白くて外が黒で全体が薄汚れた黒に見える、しかし、キタナク

ロ、は失礼だよなー、ダーティブラッキーって方がかっこいいかな)がいて、

だれにともなく泣いてる。


彼もいつもひとりぼっちだし、見かけが汚いからもてそうもないし、それを

嘆いているのか、それとも、全然そんなんじゃなくて、ここにいいおとこが

いるから、いいおんなみんなこいっ、って不遜なこと言ってる可能性もある。


いずれにしても、なかなかいいおんなは出て来ないし、そうやって、泣きな

がら歩き回る図はどこかさびしげだ。

(おいおい、なんだか感情移入しちゃってんじゃないの)

夏のねことおやじは孤独なのだ。


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