1/4ののらねこ       文は田島薫



ねことおじゃまびと

きのうの夜は茨城の両親のとこへ行った帰りに事務所に寄り、空っぽのエサ皿を

満たして帰り、ホームページの更新できょう来てまたエサを入れた。


下を見ると、バットマンがねこけもの道からとなりのベランダへ移動しようと

しているところだった。声をかけるとそのつど振り向いてニャー、と言った。

エサ食べに来いよ、って言ったけど、けっきょく上がって来なかった。


年末舞踏家の友人宅へ招かれて一泊した帰り、自宅のある駅に着いた時は元旦の

遅い午後で、前日の雪が少し残り晴れていた。

同行した別の友人が、ちょっとうちでビデオを見て行くか、っていうことになり、

ビールを買ってから歩いていたら、途中のコンクリで固められた駐車場のすみの

ひだまりに、薄汚れたねこがうずくまっていた。


腹減ってるかも知れない、って思い持ってる食料を探してみたら、ビールの他は、

のど飴しかなかったので、それを彼の前に放った。

警戒した顔つきで彼は立ち上がり後ろの方へ逃げた、足が1本途中からなかった。

そのまま、こっちをにらんでいる。

おどかして悪かったな、って思って、ちょっと声かけてからその場を離れた

んだけど、振り返ると、今度は着飾った家族連れが、ねこだ、ねこだ、って

みんなでながめていて、彼はしばらく居心地悪そうに立っていた後、家族の横を

擦り抜けて建物の日陰の暗がりの方へ、一生懸命急ぎながら逃げて行った。


彼なりに正月のほんのひとときのひだまりを、のんびり楽しんでいたんだろうに、

正月ひとりぼっちで腹減ってんじゃないか、って思っても、のど飴ひと粒出して、

どうぞ、って言ってもな〜、とんだおじゃましてしまったようだ、失敬失敬。


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