2/7ののらねこ 文は田島薫
つーとん、記憶をリセットかきょうは寒い曇天の冬らしい朝、お客さんの姿はどこにも見えない。
それでも、皿にエサを入れておいたら、やっと午後になってだれかが食べに
来た跡があったけど、だれだかわからない。
寒いせいもあるんだけど、なかなか慣れない新人だけでなく、前にずっと
来ていたお客さんまで逃げ腰で、さっと来てさっと帰っちゃうのだ。
先週もバットマンが来てたので、おお、って話しかけてんのに、エサ食べ終わちゃったから、もうそんなに長居するつもりじゃないんだ、って顔を
してから、とっとと階段下りてっちゃったし、同じようにツートンが来てた
時に階段を私が上がって来たら、初めての人を見たような顔でベランダの方へ
逃げて立ち止まり、こっちを見て考えているのだ。
あれ、この人ボクは知らないよなー、まてよ、知ってるよーな感じもしない
わけじゃないんだけど、いやいや、知らない知らない、迷ったら、知らない
方をとった方が安全なんだ、って顔が言ってる。
先週末もドア開けたら、ちょうどつーとんが来てて、こっちを見て慌てて階段を下りて行くから、おーいつーとん、って呼んだら、途中でちょっとふり
返ってこっちを見て、知らない人だよな、って自分に言い聞かせてから行っ
ちゃったのだった。
ほんの何ヶ月前には毎日のように来て、寝そべってるそば行ってさわっても気にしてなかったっていうのに、忘れちゃったのか、それとも、寒くて、のん
びりじっとしてられないから、忘れたふりして、めんどうな付合いをパスして
るのかも知れない。